「この虫歯は大きい」
2016年11月25日(金) Q&A歯医者さんで虫歯治療を受けたことがある方は聞いたことがあるかもしれません。
「この虫歯は大きい」
と担当医に言われた方へ
何を診て、何を基準に、大きい・小さいを診ているのかというと、“歯髄”(神経)との位置関係です。「虫歯が大きい」というのは、言い換えれば『虫歯が神経に近い』という意味なのです。歯髄の形は人それぞれで個人差がありますので、虫歯が小さくても、神経に近い虫歯になることもあります。
歯髄は、決してなくなってもいい器官ではありません。ただし虫歯が進行し、歯髄に近接もしくは到達した場合には、除去した方がいい器官でもあります。抜髄処置(神経を取る治療)は日々進歩しており、抜髄処置を受けた歯も、しっかり治療すればまた他の歯と同じように噛める技術があるからです。
象牙質齲蝕(歯髄には到達していない)と歯髄炎(歯髄に到達し炎症をおこしている)の間の治療は、歯髄の保存可否がとても重要な項目になります。麻酔をして、虫歯を取ったあとの歯髄(神経)の保存療法や使用材料について説明します。本多歯科では、歯髄との距離で診断して、神経保存療法の基準を設けています。
歯髄との位置関係=2㎜以上
歯髄までの距離が2㎜以上ある場合は、ほぼ安全と言えます。コンポジットレジン(樹脂)の充填ならそのまましても問題ないことがほとんどです。型取りをして銀歯やセラミックを装着する場合は、樹脂やセメントで形を整えて歯型を取ります。
歯髄との位置関係=2㎜以下
歯髄までの距離が2㎜以下の場合は、歯髄(神経)の保存治療の薬剤の使用が必要になります。また治療後に知覚過敏(歯がしみる症状)が予想されるため、知覚過敏抑制の効果のあるセメントを使用する場合もあります。
歯髄(神経)の保存療法に使う薬剤
1. グラスアイオノマーセメント
グラスアイオノマーセメントは、歯質接着能や優れた封鎖性があり、二次齲蝕(虫歯)を予防します。またフッ素除方性による歯の強化も期待できます。
2. キャビオス
低刺激性レジンとα-TCP(リン酸カルシウム)を配合し、生体適合性が良く、優れた歯髄保護効果を期待できます。
3. 水酸化カルシウム
強アルカリ性による抗菌作用と歯髄刺激による修復象牙質形成作用を併せ持ちます。非常に歯髄に近い場合やわずかに露髄(髄角の一部と交通)した場合などに用います。
4. MTAセメント(保険適応外)
ケイ酸カルシウムを主成分とし、保険適応の水酸化カルシウムより、生体親和性が高く、抗菌性や封鎖性・石灰化促進作用・抗菌作用にも優れている革新的な材料です。
しかしながら、髄角といって、人によっては歯髄の一部分だけが極細く発達している方がいらっしゃいます。髄角は、レントゲンでも一部分しか写らず、診断や歯髄保護の判断が非常に難しい場合がほとんどです。その場合は歯髄の保護が上手くいかない場合もあります。また、虫歯を取る際の歯髄刺激や治療後の知覚過敏などにより、歯髄炎(神経に炎症が起こる)になることもあります。このような場合は、治療後に自発痛や温痛をきたし、歯髄(神経)の除去をしたほうが良い場合もあります。
治療後に「今日は神経の保護をしましたので...」「虫歯が大きかったので...」と担当医から説明があった場合は、治療後の痛みに充分にご注意ください。もし麻酔が切れたあとに、自発痛(なにもしていないときも痛い)がある場合には、鎮痛剤を服用してください。また、次の予約日まで我慢せず、速やかにご来院ください。