親知らずの存在は、主に大臼歯の歯並びや噛み合わせに関与する場合があります。親知らずの萌出による力で大臼歯が押され、第二大臼歯が異常な方向に倒れてしまうことがあります。
それにより上下の歯の咬合接触状態が変化することで噛み合わせにズレが生じたり、歯に無理な力がかかってしまうことがあります。
永久歯の中で最後方に位置する第三大臼歯のことを「親知らず(智歯)」と言います。前歯(中切歯)から数えて8番目の歯です。人によって生えてくる人と生えてこない人がいます。生えてこなくても歯肉の中の埋伏しているものを埋伏智歯と言います。
早い人であれば13歳ごろに萌出してきますが、20歳前後で萌出する人が多いように感じます。萌出するスペースがない場合には横を向いて萌出したり、外側を向いて萌出する場合があります。また埋伏している場合でも歯周病や加齢などで歯肉退縮が起こり親知らずが見えてくる場合もあります。
萌出による痛みは、ほかの永久歯の萌出と同じような症状があります。一番多いのは「奥歯で噛んだら痛い」です。これは萌出しようとする親知らずと食べ物に歯ぐきが挟まれることによる痛みです。半分だけ萌出した親知らずを半埋伏智歯と呼び、半埋伏智歯の場合は親知らずと歯ぐきの境目から細菌感染を起こしやすく智歯周囲炎を引き起こす場合があります。
親知らずの存在は、主に大臼歯の歯並びや噛み合わせに関与する場合があります。親知らずの萌出による力で大臼歯が押され、第二大臼歯が異常な方向に倒れてしまうことがあります。
それにより上下の歯の咬合接触状態が変化することで噛み合わせにズレが生じたり、歯に無理な力がかかってしまうことがあります。
実は矯正治療後の「後戻り」に親知らずの存在が「関与する説」と「関与しない説」と両方あります。私は「関与しない」と考えています。ですから矯正治療をしたら必ずしも親知らずの抜歯が必要であるとは考えておりません。
しかし矯正治療をする上で、第二大臼歯を起こす治療(アップライト)などを行う際に親知らずが悪影響を及ぼす場合には抜歯をさせていただいています。
親知らずは最後方に位置していることもあり、歯磨きが非常に難しいことが多いです。それにより虫歯や歯周炎が進行しやすい傾向にあります。虫歯が進行すると歯髄炎(神経の炎症)、歯周炎が進行すると歯肉膿瘍(歯肉の炎症)が起こり痛みや腫れを生じます。
歯肉や歯槽骨などの歯周組織の構造自体は、他の歯の歯周組織と同じです。しかし親知らずの萌出の方向や位置の関係により、完全に萌出することは少なく、歯の一部が歯肉に埋もれてしまうことが多くあります。歯肉はエナメル質とは接合しないため、その部分に歯垢がたまりやすく細菌感染を引き起こし、歯肉の腫れや痛みを生じてしまうのです。
これらの症状がある場合には「智歯周囲炎」を引き起こしている可能性があります。智歯周囲炎は細菌感染による症状のため、細菌の活動を抑える抗生物質の投与が効果的です。何回も腫れるようなら抜歯を考えた方がいいです。
基本的に親知らずの抜歯はどこの歯科医院でも行っています。下顎の親知らずの抜歯を行う際には、顎骨の神経との位置関係を確認する必要があるため、CTレントゲンを完備している病院がオススメです。
抜歯の難易度によっては一般歯科医院では対応ができない場合もあります。その場合は大学病院や市民病院の口腔外科専門医に抜歯を依頼させていただいています。
ほとんどの親知らず抜歯症例は当院で行えますが、抜歯が困難と判断したものや抜歯後のトラブルを懸念した場合には提携病院にご紹介させていただいています。
僕は学生の頃に左側の親知らずを抜歯してもらって、「右側も抜かないと…」と考えてはいたものの、35歳まで下顎右側の親知らずを放置していました。
年末の忙しい時に親知らず周囲が急に痛くなって、先輩の歯科医院で抜歯をしてもらいました。抜歯をしている時は麻酔が効いていて痛みもそんなになかったのですが、それから1週間は痛み止めの服用をしないと会話や食事中に痛みが続きました。
たまたま年末年始で仕事が休みだったので良かったなと感じています。上顎智歯よりも下顎智歯の抜歯の方が痛みが強い傾向にあるため、下顎智歯の抜歯をする際はなるべく抜歯当日周辺に大事な予定がない日をお勧めしています。
親知らずの抜歯に関しては、
の3種類あります。自分がどのステージに入るのかはご自身で判断されずに担当の歯科医師にお問い合わせください。
ゆっくり睡眠をとって体調管理に気をつけてください。抜歯当日に体調不良(発熱や頭痛など)がある場合は遠慮なく予約をキャンセルしてください。
抜歯の予約時間の前までに必ず食事を済ませておいてください。まれに緊張や麻酔により低血糖症状を訴える方がいらっしゃいます。抜歯後は食事がしにくいため、いつもより多めの食事をお勧めします。
抜歯した後の穴は血液の充満によって治癒が促進されます。術後24時間は抜歯窩に血液の瘡蓋を作るため「ブクブクうがい」はせずに軽くゆすぐ程度にしておいてください。
なお抜歯当日はお風呂の長湯は避け、シャワー程度にしてください。喫煙は歯肉の毛細血管を縮小させ、抜歯窩のドライソケットや治癒不全を招く場合がありますので、抜歯当日の喫煙はなるべく控えてください。
抜歯後は止血確認を行ってから帰っていただいていますが、まれに抜歯してから数時間後に出血してくる場合があります。少し血の味がしたり、唾液に血が混ざる程度の出血であれば問題ありません。
出血の量が多い場合にはガーゼやティッシュを丸めて抜歯部位にあて30分ほど強く噛んでください。それでも止まらない場合やドクドクと波打つような出血がある場合には、必ず当院までご連絡ください。当院が診療時間外の場合は、救急外来を受診してください。
親知らずの抜歯は保険診療の適用ですが、治療内容や親知らずの症例によって金額が変動します。親知らずの抜歯ではパノラマレントゲンを撮影することが多いです。下顎の難しい親知らずや埋伏している歯の抜歯の場合にはCTレントゲンを撮影することがあります。
親知らず | |
---|---|
簡単な親知らずの抜歯 | 約1,000円 |
難しい親知らずの抜歯 | 約1,600円 |
埋伏している歯の抜歯 | 約3,500円 |
お口全体のレントゲン | 約1,200円 |
小さい歯のレントゲン | 約150円~180円 |
CTレントゲン撮影 | 約3,500円 |
提携病院への紹介 | 約1,000円 |
鎮痛薬・抗生物質 | 約200円~600円程 |
※3割負担の概算金額をご案内しております。
※初診料や再診料は含まれません。